改めて知る。ジーンズの王道リーバイスのこと。
ジーンズの王道といえば「リーバイス」が挙げられます。現行ものも然り、過去に作られているものが古着として異常に価値が上がっているものもあります。では、そんな価値の高いものなど、今更聞けないリーバイスの古着のこと調べてみました。
リーバイスについて
リーバイスは、1853年にリーヴァイ・ストラウス(Levi Strauss)が創業したメーカーで、ゴールドラッシュに湧くアメリカにドイツからの移民としてやってきたリーヴァイ・ストラウスは、金鉱で働く人々からのニーズに応えるかたちで、ジーンズの前身となるワークパンツを製造しました。元々はキャンバス生地を用いたものを販売していたのですが、その後デニムへと素材を変更し、世界初のジーンズを完成させました。ジーンズ誕生のきっかけは「厳しい作業環境でも破れないパンツを」という労働者の声からです。リーバイスを知っている人には有名な言葉ですよね。この要望に応えるため、リベットでポケットを補強するという仕立屋のヤコブ・デイビス(Jacob Davis)のアイデアを採用し、さらに虫除けやヘビ除けといった効能(残念ながらのちにそのような効能が無いことが解明されています)を得るため、インディゴに染め上げられました。これら現在にまで続くジーンズの仕様を最初期から完成させていたのです。
リーバイスの特徴
リーバイスジーンズの特徴①「ポケットの仕様」
ジーンズにおけるさまざな原点を生み出したリーバイスなのですが、そのなかでも代表的なのがポケットの仕様です。特に画期的な発明と言われるポケットを補強するための「リベット」は、1873年の時点で特許が取得され、すでに実際の製品に採用されていました。両サイドのポケットとコインポケット、2つのヒップポケットからなる「5ポケット」の仕様もリーバイスが発明したものでした。これは知らない人も多いのではないでしょうか。ちなみにコインポケットは元々は懐中時計を入れるためのものでしたが、腕時計が一般的になるとコインやZippoのライターを入れるポケットとして使われるようになりました。
リーバイスジーンズの特徴②「モデルによって異なるフロント開口部」
ボタンフライによるフロント開口部も、リーバイスが生み出したディテールです。現在ではほとんどの一般的なジーンズでジッパーフライが採用されていますが、501が誕生した当時はまだジップフライが発明されていませんでした。ジップフライ登場後はリーバイスのジーンズもほとんどのモデルでジップフライを採用していますが、501では変わらずボタンフライを採用しました。当然、実用面では劣るものの、クラシックな仕様であることと、ボタンと生地が擦れることでボタンの形に色落ちするという特性から現在でも高い人気を誇っています。
リーバイスジーンズの特徴③「背部のパッチ」
品質の保証を表わす、ジーンズの背面に縫われているパッチもリーバイスの特徴の一つです。このパッチは「ツーホースパッチ」と呼ばれており、描かれた2頭の馬のイラストは“両サイドから馬で引っ張っても破れないほど丈夫である”ということを表現しています。リーバイスではモデルによって紙パッチやレザーパッチを使用し、それぞれ異なった独特の経年変化が楽しめます。
リーバイス 4大ヴィンテージ
歴史が長いリーバイスの中でも誰もが知っているような有名な主要品番、主要4モデルをここでご紹介します。
【リーバイス・S501XX “大戦モデル”】
リーバイスの中でも長い歴史をもつ「501」。そのなかでも、第二次大戦の1942~46年に製造されたモデルは、少々マニアックな人向けのヴィンテージです。別名 “WWll(World War ll)モデル”とも呼ばれます。
第二次大戦下のアメリカで行われた物資統制のなか、ジーンズも同じように、さまざまな仕様の簡略化が義務づけられることになりました。なかでも、月桂樹が刻印されたボタンや無地のドーナツ型ボタンといった廉価な既製パーツ、通常よりボタンの数が少ないフライフロント、軍用のヘリンボーンツイルやチェックのシャツ地で代用されたポケットの裏地などは、当時にのみ見られた特異なディテールであり、そこには統一性のない多種多様なタイプが存在しました。〈リーバイス〉では通常の製品とは異なることを示すため、品番の頭文字に“ Simplified(簡素化された) ” を意味する「S」の記号を追加し、1946年までこれが続いたのです。
その特徴をまとめまてみました。
コインポケットのリベットが省略されている
1870年代の誕生から現在まで、「501」のコインポケットは金属リベットで補強されているのが通常です。しかし戦時物価統制局の通達を受け、その省略が余儀なくされました。大戦モデルにのみ見られるレアな仕様です。
バックポケットのステッチはペイントに変更
ブランドアイコンであるバックポケットのアーキュエイトステッチも、物資統制の対象になり省略されています。代用としてステンシルペイントでステッチを描くという苦肉の対策がとられていたのですが、洗濯によって消えてしまうのが難点でした。そのため現在まで未着用のまま残るデッドストックを除き、ヴィンテージで見つかる個体は無地の状態になったモノがほとんどです。偽物との見分けが難しい。
赤タブのブランド名は片面のみ
1936年に初採用されたバックポケットの赤タブ。今では当たり前のようについていますよね。現行品では両面にブランド名が織り込まれていますが、その最初期にあたる当時は前面に文字が入り、裏は無地という片側のみのデザインでした。これが’50年代中頃までのディテールとなり、年代識別のポイントになります。
【リーバイス・501XX “XXモデル”】
これぞヴィンテージジーンズというほどの代名詞モデルであり、古着を知った人はこれを手に入れたい、履いてみたいと思った人も多いのではないでしょうか。「501XX」のロットナンバーは1890年に導入され、1966年頃まで使われていた名称です。しかしヴィンテージ古着の世界で “XXモデル”と呼ばれるのは、’46~’66年頃までに製造されたものを指します。大戦下の物資統制を経て不要なパーツが削ぎ落とされ、現在の5ポケットジーンズとほぼ変わらない姿になった一方、ワークウェアを出自とするタフな作り込みも残るなど、デニムフリークの間では“ 501の完成形 ”と称されています。アーキュエイトの中央でステッチが交差するダイヤモンドポイントが見られたり、隠しリベットや革パッチが使われていた最後期のモデルとして知られるなど、ヴィンテージならではのディテールが満載です。ではその特徴は。
V字ステッチ
トップボタンの脇に施されたV字のステッチは、ミシンに返し縫い機能がなかった1960年代まで見られたヴィンテージ特有の縫製仕様です。製造年を問わず、すべての「501XX」に共通するディテールとなっています。
前期は革パッチ、後期は紙パッチに変化
「501」の右腰に取り付けらたラベルは、1886年~1957年頃までが革パッチ、その前後~現行品は紙パッチが使われています。 “XXモデル”は過渡期のモデルのため、大きく分類して前期が革パッチ、後期が紙パッチとなる。
XXとは生地の特徴
「501XX」のXXは、生地の特徴を指しています。ジーンズが誕生した1870年代当時としては、最も重厚なデニムを用いたことから、「ダブル エクストラ ヘビー」の略称として品番の末尾に付けられていました。その後、よりヘビーオンスの生地が出回るようになったため、インディゴ染料だけで染め上げた最高ランクの生地「エクストラ エクシード」の略に意味付けが変わったと考えられています。当初はニューハンプシャー州のアモスケイグ社の生地を使っていたが、1915年よりノースキャロライナ州のコーンミルズ社が生産を請け負い、以降そのデニム生地は、〈リーバイス〉にのみ独占的に供給されていました。
【リーバイス・501“ビッグEモデル”】
ヴィンテージジーンズにおけるひとつの頂点であり、ベンチマークとされるXXモデル。その後継となる “ビッグEモデル”は、色落ちにこだわりながら、もう少し気軽にヴィンテージを楽しみたい人に人気です。
1960年代後半~’73年までのモデルを指す“ビッグEモデル”。ロットナンバーの末尾から「XX」の文字が外され、アーキュエイトステッチの色もイエローから金茶に変更、またそのステッチのピッチ(運針数)も倍増され、XXモデルの途中まで採用されていた隠しリベットもバータックと呼ばれる縫製による補強になるなど、数々のアップデイトが見られます。さらにトップボタン脇に施されていたV字ステッチに代わって、2本の平行ステッチが使われ始めたのもこの頃です。なかでもニックネームの由来である大文字「E」表記の赤タブが最大のポイントであり、これ以降は現在にいたるまで小文字「e」表記になっています。特徴をいくつかまとめてみました。
紙パッチには「501」の表記以外入らない
1957年前後から腰のラベルはすべて紙パッチに変更されています。そして’67年頃からロットナンバー末尾の「XX」が付かなくなり、現在と同じ「501」表記になっています。さまざまな種類があるヴィンテージのなかでも、紙パッチの「501」の前後や上部に何らかの文字が入らないシンプルな表示は、この時代の“ビッグEモデル” だけです。
「E」の表記と左右非対称の「V」が目印
“ビッグEモデル”の呼称は、赤タブに織り込まれたブランド名の表記が由縁です。それまで「LEVI’S」だったものが、1973年を境に「LeVI’S」になるため、「E」表記の最終モデルという意味を込めたニックネームです。さらに’60年代中頃より前は「V」が左右対称のフォントだったが、この時代は右側のみ細字になるのが特徴です。つまり大文字「E」+左右非対称「V」が、“ビッグEモデル”のひとつの目印になるのです。
トップボタン裏の刻印数字は複数あり
トップボタンの裏に刻印されている文字は、生産工場の識別番号と言われており、これも年代を特定するひとつの目安になっています。ほかのモデルにも散見されるため必ずしもイコールではないのですが、“ビッグEモデル”では「2」「4」「6」「8」「16」などがあります。
【リーバイス・501“66モデル”】
この66モデルは、ここまで紹介したモデルより現存する数が多く、コンディションが良好なものでも比較的手を伸ばしやすい価格で見つかると思います。ヴィンテージジーンズの入門編として探してみても良いのではないでしょうか。1973年~80年頃の生産品を指すデニムのことで、通称 “ 66モデル ”と呼ばれています。そのニックネームは新品のときに右側のバックポケットに留められている、フラッシャーと呼ばれる紙ラベルに記載された「©1966」の表示に由来しています。これは1966年に誕生したモデルという意味ではなく、ラベルがデザインされた年を示したもので、誤って認識している古着好きも多い様子。また同じ“ 66(ロクロク)モデル ”のなかにも前期と後期の区分けがあり、よりクラシカルで色落ちを味わえる前期のほうが、人気も価格も高めです。
では、特徴の紹介です。
「501」上部のスタンプ
紙パッチのロットナンバー上部に押された「CARE INSTRUCTIONS INSIDE GARMENT(衣類の内側に取り扱い表示)」のスタンプが、この時代の特徴です。1980年代の中頃からはデザインの一部として印刷に変わっています。
生地の収縮率は8%か10%
上述の紙パッチにスタンプされているとおり、“ 66モデル ” からは内側に取り扱い表示のタグが付いています。古着では印字が消えていることも多々ありますが、最下段に明記されている生地の収縮率は8%で、後継モデルでは10%に変わります。
前期と後期でバックポケットのステッチが異なる
バックポケット入口の折り返し部分はシングルステッチです。1978年頃まで見られたこの仕様を備えるものは “ 66前期 ” 、チェーンステッチとなった変更後のタイプは“ 66後期 ” または単に後継の “ 赤ミミモデル ” と区別されます。前期のほうがタテ落ちし、色合いにも深みがある。
トップボタン裏の刻印は「6」が基本
例外もありますが、“66モデル ” ではトップボタン裏に「6」と刻印されている個体が多い。これは前述もしましたが品質管理のため、生産工場を特定する識別番号だったとする説が有力です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまでリーバイスの特徴をまとめてみましたが、他にもご紹介したいことは多々あります。また次回ではジーンズの年代の判別方法をご紹介できればと思います。
最近のコメント